-- スターターモーターのオーバーホール --


今年の5月頃から、キーを回してもスターター付近から”グッ”という音がするだけで、スターターが回らないという症状が出ていました。
それでも最初は2、3回キーを回すとスターターは回っていましたが、だんだん回る確率は下がっていき、ついには10回近くキーを回さないと回らなくなってきました。
もし出先でエンジンがかからなくなったら一大事なので、修理してみることに。

原因としては、@スターターモーター、Aキースイッチ、B配線類、あたりが考えられます。Aについては、リモートエンジンスターターの操作によってもモーターが回らないことがあることから消去。Bについては、あまり考えたくないので消去。ということで、@のスターターモーターを第一容疑者と定めてオーバーホールしてみることにしました。

モーターを外している間は不動車になるので、中古のモーターを購入し、オーバーホール後、使用中のモーターと交換することにしました。


モーターの構造自体は単純なのですが、部品点数がそこそこありますので、パーツリストの図を拝借します。
構造は大体どのエンジン用のモーターも同じようなものですが、構成部品はエンジン形式、年式等によって細かく異なりますので、部品注文の際は注意を要します。

まずは、モーター後部のボルト(24-729)2本を外し、後部のカバーを外します。
写真は、上記のボルト2本に加え、プラスネジ(A)2本も一緒に外し、後部のカバー(24-740)を外した状態。コミュテーターとブラシホルダー(24-750)、ベアリング(24-7222)が見えます。

ブラシとベアリングは交換しますので、取り外してしまいます。

コミュテーターの溝の中には、少しブラシのカスが入り込んでいるので・・・

ショートを防ぐため、精密ドライバー等で溝を綺麗にします。
コミュテーターも、目の細かいサンドペーパーで表面を少し磨いておきます。
コミュテーターの磨耗は僅かなものでした。

ベアリングは電装屋で購入し、ついでに換えてもらいました。
ベアリングプーラーという専用工具で取り外すのですが、ベアリングとコミュテーターの隙間が小さい為、手持ちの安物では外せませんでした。

使われているベアリングは、サイズは608で、鋼板製両側シールド付き、つまり608ZZという規格のようです(パーツリストによれば前期型V6、RE用モーターには608型が2個必要。後期型V6、RE用モーターはそれぞれ2種類あり、HCFS-247189、HCSS-212576、HC3S-201246以前は608型ベアリング1個が使われ、以降は別のベアリング1個が使用されています。)。
608型は一般的な規格ものなので、ホームセンターなどでも売られている場合があります。
写真のベアリングはゴムシール付きのタイプの為、純正よりも優れているとか。

今回は、スイッチ(24-760)も交換します。スイッチは非分解式で、内部の接点がどの程度減っているか確認できないので、念のためです。
このスイッチには、モーターに大電流を流すリレーの役割と、スターターのギアを飛び出させ、エンジン後部のギアと連結させる役割があります。
取り外しは、写真の2本のネジ(@)を外すだけですが、相当強く締められているので、ショックドライバーで外す必要があります。

取り付け時もショックドライバーで締め付けないと、高い確率で緩んでしまうそうです。

スイッチを取り外すと、奥にレバー(24-730)が見えます(写真右)。
スイッチはこのレバーをテコにして、スターターのギアを飛び出させます。
レバーは樹脂製で、僅かに磨耗が見られました。これも交換しておきます。

スイッチは、件の電装屋で購入した為、純正品(三菱)ではなく、互換品(New-Era)となってます。
純正品よりも少し割安ですが、端子の向きが異なっていました(右が純正品、左が互換品)。
これで問題なく装着できるのか心配でしたが、問題ありませんでした。

プラネタリーギア(24-746)部分等は、洗浄し、グリスを適度に塗りつつ組みなおします。
グリスは、200℃まで耐えられるというウレアグリスを用いました。
中央の穴の中には、スチールボールが入るので、入れ忘れないように注意します。

ギア周囲の黒い部分は、ガスケット(24-760A)です。これも念のため新品にしました。

問題はこのブラシ。
写真右側から、左側へと、形状変更されています。
ブラシホルダーは樹脂製となり、小型化されいます。ブラシ自体も小型化され、2/3程度の接触面積しかありません。
これでモーターの性能がフルに発揮できるのか、また、ブラシの磨耗が早くならないのか、疑問が生じます。

メーカーに確認してもらいましたが、このブラシが現在の適合品であり、旧形状品の在庫も既に無いとのことなので、仕方なくこれを使用することに。

この新型ブラシ、組み付けに大変苦労します。
隙間の多い旧型であれば、ブラシを指で押さえつつ組み付けできるのですが、新型は樹脂で覆われているので無理。
コミュテーターに近い径の筒を一旦押し込み、コミュテーターにスライドさせるようにして組み付けました。
写真右は、筒により、一旦ブラシを押し込んだ状態。”筒”とは、香辛料の入っていた瓶の蓋です。

ブラシの組み付けだけで1時間以上かかりました。
どう考えても設計が間違っている気がします。

(追記:ベアリングが邪魔になるので、ブラシの組み付け後にベアリングを打ち込んだ方が良いかもしれません。)

なんとかブラシを嵌め込みました。
この状態からモーターを組んでいきます。

しかしクリアランス狭いなぁ・・・ブラシの磨耗粉の行き場はいずこ。

完成!
念の為、車体に取り付ける前に、ブースターケーブルとバッテリーを用いて、動作確認をしておきます。
スイッチの動作テストは、スイッチの平型端子にプラスを接続し、スターター本体にマイナスを接続します。ギアがスムーズに出入りすれば正常です。
モーターの動作テストは、スイッチのボルト端子のうち、ブラシと接続されている側にプラスを接続し、スターター本体にマイナスを接続します。モーターが勢いよく回ればOKです。トルクの反動があるので気をつけてください。

スターターモーターの脱着の方法(V6エンジン)ですが、覚えている範囲で書いておきます。

@バッテリーの端子を外す(モーターへは太いプラス線が来ているので、バッテリーの切り離しは必須です)。
Aエンジンルームからモーターに手を伸ばし、端子を外す(スペースの関係上、ボルトの端子が外せなかったので、平型端子のみ外した。JFエンジン車であれば、ボルトの端子も簡単に外せた記憶があります。)。
Bジャッキアップする。
Cアンダーカバーを外す。
DATFクーラーパイプを固定するブラケットのボルトを外す(パワステポンププーリー付近)。
EATのベルハウジング部のスターターモーター取り付けボルト3本を外す(配線固定用のブラケットが共締めされているので要注意)。
FTFクーラーパイプを避けつつスターターモーターを隙間から引き出し、ある程度引き出したところでボルトの端子を外す。
 (スペースが狭いので知恵の輪状態です。回したり向きを変えたりしながら、引き出してください。落下注意。)
G逆の手順で組み付ける。

オーバーホールしたモーターを取り付けてみましたが、スターターモーターが原因ではなかったようで前述の症状は解消しませんでした。
ですが、モーターの作動音が元気良くなりましたし、モーターの回転数は確実に上がったようです。
また、モーターの内部抵抗も減ったようで、キースイッチをSTARTからONに戻しても、しばらく惰性で回転している音が聞こえます。
問題は解決しませんでしたが、成果は上々です。17年の間にモーターも疲れていたのでしょう。

今回かかった費用は、
スイッチ6000円強
ブラシ3100円
ベアリング500円くらい?
レバー610円
ネジ類730円
の合計1万円強ほどです。

結局、キースイッチのオーバーホールで問題は解決しました。これについてはメンバー専用ページにて公開中です。
キースイッチのオーバーホール後、しばらくすると症状が再発しました。スターターリレーの設置で解決です。